領収書を作成したのに、お客様から「領収書はいらない」と言われたり、受け取らないで帰ってしまうというお客様は少なくありません。 いらなくなった領収書をどのように処分したらよいのか、迷ってしまいますよね。 そこで、受け取らなかった領収書の処分を2つのケースに分けて、そして受け取らなかった領収書にも5万円以上の領収金額の場合には、収入印紙を貼らなければならないのか?この3点について説明させていただきます。
お客様との関係では、受け取らなかった領収書を保管する義務はありません
まず、お客様が受け取らない場合ですが、お客様が「いらない」と領収書不要を意思表示した場合と、受け取らずに帰った場合の2つのケースがあると思います。 「いらない」と意思表示したケースでは、お客様に渡す領収書を保管する義務は、法的にも道義的にもありませんので、破棄しても大丈夫です。 一方、受け取らずに帰った場合は、いらないのか、それとも受け取るのを忘れたのか判断がつきません。このケースでは後日、取りに来ることも考えられますので、保管しておくのが道義的にはベターです。 ただ、法的には受け取り忘れの場合は、お客様の過失になりますので保管する義務は生じません。
社内の会計処理上は、控えや複写は保管が必要
お客様との関係では以上のとおりですが、一方、社内の会計処理としては、領収書の控えや複写は必要であることは指摘するまでもありませんので、ちゃんと保管していただきたいと思います。 また、実際の実務では、法的には領収書の保管義務はありませんが、やはり道義的には「いらない」と言われても保管するようにしておくのが、親切な対応になります。 社内保管用の控えや複写にホッチキス止めにして、「領収不要」や「受け取り不要」と記載しておくのがベストです。
お客様が受け取らなかったら収入印紙は貼らなくっても大丈夫
それでは、領収金額が5万円以上の領収書には、お客様が受け取らなかった場合でも収入印紙は必要なのかという問題です。 これは悩ましいのですが、答えを先を明かすと、「必要ありません」となります。 お客様が受け取らなかった、もしくは「領収書はいらない」といった場合には、収入印紙を貼らなくてもよいのです。 この根拠は、国税庁のHPの「印紙税の手引き」にあります。「納税義務者等」の(1)と(2)です。 (1)では、収入印紙は課税文書(領収書)を作成したときに貼らなければならないということを規定しています。 ということは、やっぱり領収書を書いたら、収入印紙を貼らなけらばならないのでは、と思われるからもしれませんね。大切なのは(2)です。 (2)では、課税文書(領収書)の作成について、次のように説明しています。「単なる課税文書の調製行為をいうのではなく~その文書の目的に従って行使することをいいます」。
つまり、領収書を書くだけでは、作成にはならなくて、手渡すまたはお客様が受け取ることによって、はじめて作成になる、ということなんですよね。 法律ならではの理屈っぽい説明ですが、要はお客様が受け取らなかった領収書には、収入印紙を貼る必要はない、ということなのです。